
最新オリジナル・アルバム『As I Am』からのリード・シングルで、R&Bチャート/ポップ・チャートの双方のトップを飾り、2007年度グラミーにおいてベスト女性R&Bヴォーカル・パフォーマンスとベストR&Bソングの2冠に輝いた名曲だ。ちなみに同グラミーの授賞式ではジョン・メイヤーとのデュエットを披露してもいた。トレードマークのピアノや打ち込みビートを使いながらもクラシック的でもストリートっぽくもなく、ひたすら70年代風の素朴でピュアな感性を全面に押し出した普遍的なソウル・ミュージック。そう、もはや彼女の音楽はジャンルに縛られない。魂の叫び、ここに極まれり。その意味での「ソウル」なのだ。
ポスト・マイケル・ジャクソンと言われた男性シンガーはこれまでにもシーンに現れては消えていったが、少なくとも現時点での最有力候補はクリス、この男である。とびきり上質なダンサーであり、キュートな笑顔がたまらないマスクの持ち主であり、もちろん素晴らしい喉を聴かせる。この曲は、2007年リリースのセカンド・アルバム『Exclusive』からのシングル・ナンバー。スターゲイトが作り出すクリーンなギターの音色が印象的なシンプルなトラックは清涼感に満ちたもので、ジョンテイ・オースティンを加えたソングライター陣によるポップなメロディがまた美しい。
あまりにも鮮烈だった初期のヒット“Goodies”のおかげで「プリンセス・オブ・クランク&B」という代名詞がついてまわったシアラだが、そんな狭苦しい枠組に押し込められるような小さな才能ではなかった。これは、彼女の溢れる魅力を漏らさず伝えてくれたセカンド・アルバム『The Evolution』からのシングルで、数々のR&Bヒットを作り出してきたダークチャイルドことロドニー・ジャーキンズのクルーによるプロデュース作品。エレクトロっぽいリズムの上にメロディアスな旋律を乗せたキュートな世界は、シアラのやわらかな声質にぴったりフィットしていると言えそう。
J・ホリデイはワシントンDC出身のシンガー。キャリアの初期にはグループで活動していた彼がキャピトルからソロ・シングル“Be With You”をリリースしたのは2006年のこと。それに続くこのセカンド・シングル“Bed”は見事R&Bチャート首位に輝いている。近年のアーバン・ミュージックのひとつのトレンドに80年代フレイヴァーの導入があげられるが、これもそうした流れを汲むナンバーで、歩くようなスピード感のゆったりとしたグルーヴをバックに「ベッ、ベッ、ベッ(ベッド)」と執拗に繰り返す様が印象深い。リアーナの“Umbrella”にも似たスタイルだが、それもそのはず。両曲のソングライターには昨今人気のザ・ドリームが参加している。
これもまたスターゲイト制作による典型的なミッド・ナンバー。分かっちゃいるけどやめられないとはこのことで、曲の作りはほぼ定型化されたものだけれど、それでもなお魅力的に響いてくるのだから仕方ない。マリオは2002年にビズ・マーキーの“Just Friend”を元気にリメイクした“Just Friend 2002”で華々しくデビュー。そのときはまだお子様シンガー然としていた彼だが、ニーヨがソングライトに参加して自身の名を上げた“Let Me Love You”(2004年)あたりから大人びて、今回収録された“How Do I Breathe”を含むサード・アルバム『Go』(2007年)では貫禄さえ感じさせるほど落ち着いた歌を聴かせるシンガーに成長した。優れた曲と優れたシンガーが出会った好例と言っていいだろう。
高校時代に知り合って歌い始めたというマイク・イージー、プリティ・スライ、ルード・ボーイ、ペニー(ブレント)の4人からなる男性ヴォーカル・グループ。昨年あたりから知名度を上げてきた彼らだが、実は2002年にインディペンデントからアルバムをリリースしており、活動歴は7年を超える中堅どころだ。本拠地はフロリダとあって、サウス・フレイヴァーの強いビートも乗りこなすが、ここではスターゲイトによるハープ使いの神秘的なムードの中、「オレに必要なのは彼女じゃなくてお前なんだ」と熱く口説く。リードが入れ替わる展開部など、グループならではのスリリングなヴォーカル・ワークも楽しい。なお、彼らは最近になってグループ名をギット・フレッシュに変更し、ソー・ソー・デフと新たに契約を結んだ。
スターゲイト&ニーヨの最強タッグによる口説きバラードを歌うのは、ニューヨークはブロンクス出身のプエルトリカン・シンガー、マリオ・ヴァスケス。彼は、「アメリカン・アイドル」の第4シーズンに出場し、ファイナリストの12人にまで勝ち残ったにもかかわらず、自ら辞退して驚かせたというトピックの持ち主。その後、彼は業界の重鎮クライヴ・デイヴィスに見出されてアリスタと契約を結び、この“Gallery”でデビューを飾っている。トニ・ブラクストン“Breathe Again”の一節をさらりと織り込みながら、さすが「アメリカン・アイドル」出身と唸らせること間違い無しの圧倒的な歌唱力で歌の世界に引き摺り込む。
もしかすると、こちらのナターシャもR&Bファンの中にはノー・チェックだった人もいるかもしれない。彼女は、ジャンル分けをするとすればポップスの枠に入るイギリスの白人シンガー。前曲のジョーダンの場合と同じく、やはりこの曲が特別R&Bファン向けの内容となっている。明快なポップスやダンス曲が評価されてきた彼女だけに、じっくりとグルーヴを感じさせるR&B的なアプローチのこの曲を過小評価する声もあったようだが、T-PAINによってR&Bリスナーにもすっかりお馴染みとなったヴォイス・エフェクトを導入し、また人気のショーン・キングストンをフィーチャーするなど、このコンピを手にするようなリスナー層ならばきっと気に入るはず。
80年代から長らくソウル界のディーヴァとしてシーンに君臨してきたホイットニー・ヒューストン。いよいよ本格再始動が目前に迫ってきたわけだが、その前に軽くおさらいということか、先に新しいベスト・アルバムがリリースされている。惜しくもその選からは漏れたものの、ぜひとも押さえておきたいのが2002年のアルバム『Just Whitney』に収録されたこの曲だ。TLC“No Scrubs”やデスティニーズ・チャイルド“Bills, Bills, Bills”といったR&Bヒットを手掛けてきたシェイクスピアを起用。作風としてはそれらのようなバロックR&Bではなく、(同じくシェイクスピアの手による)ティナ・ノヴァック“Been Around The World”タイプで、アイズレー・ブラザーズの名曲“Between The Sheets”のネタ使いがなんとも心地よく、ホイットニーの余裕の歌い廻しには風格が漂う。
メアリー・J・ブライジの遺伝子を継ぐ新世代のシンガーとして、2004年のデビュー以来、コアなR&Bリスナーたちから注目を集め続けているのがこのキーシャ・コール。身近なトピックを歯に衣着せぬ物言いで歌に託すアティテュードは、彼女が生まれ育ったゲットーの女の子たちを中心に圧倒的な支持を獲得している。この曲は、キーシャのデビュー・アルバム『The Way It Is』からのシングル曲で、R&Bチャート3位/ポップ・チャート19位を記録したバラード。実際に彼女が体験したという男性との恋愛をもとに自身がペンを走らせ、すぐにクリエイターのグレッグ・カーティスとともにレコーディングに取りかかったという。そうした勢いが良い方向に働いているのか、ピュアで情熱的な歌いっぷりがたまらなくソウルフルだ。
ロンドン出身のレオナは、「アメリカン・アイドル」の名物審査員であるサイモン・コーウェルが手掛ける、いわばUK版「アメリカン・アイドル」とでも言うべきオーディション番組「The X-Factor」の第3シーズンの優勝者。彼女の優勝が決定されるやいなやリリースされたシングルは爆発的なヒットとなり、すでに本国ではスターの仲間入りを果たしている。それもそのはずで、抜群の歌唱力と魅力的なルックスを兼ね備えた彼女はこの手のオーディション番組出身者の中でも群を抜く存在。アリシア・キーズ“No One”にも通じるピアノの調べがやさしく響くこの曲は、かつてモニカ“Before You Walk Out Of My Life”を手掛けていたソングライターのアンドレア・マーティンがJR・ロテムと共にペンを取っている。
カリブ海のバルバドスでスカウトされ、デフ・ジャムのオフィスでジェイ・Zに認められて即契約というシンデレラ・ストーリーを地で行くリアーナ。デビュー当初は“Pon De Replay”のようなダンスホール系のヒットの印象が強かった彼女だが、セカンド・アルバム以降はレゲエやR&Bはもとより、ロックやダンス・ミュージックなどを貪欲に取り込んだ音楽性でジャンルの境界線を軽々と飛び越すようになった。この“We Ride”は、スターゲイトのプロデュースによるポップR&Bチューン。かわいい声質ながら張りのあるヴォーカルが、クールでいて熱いリアーナの不思議な魅力を生み出している。セカンド・アルバム『A Girl Like Me』に収録。
2007年リリースのR.ケリーのアルバム『Double Up』に収録されていた話題のコラボレーションがこれ。R.ケリーとアッシャーが二股にかけられていたというシチュエーションをデュエット形式で歌う、ノヴェルティ・ソングを得意とするR.ケリーならではのユーモア溢れるナンバーだ。チャート上ではR&Bチャート最高位4位止まりだったものの、『Rolling Stone』誌の2007年ベスト100曲の26位に選ばれるなど、その着眼点やセンスは大いに評価されていると言っていいだろう。もちろんユーモアだけではなく、ふたりのキングによる贅沢すぎるヴォーカル合戦も聴きどころ。
デビューから15年経ったいまもなお、甘いバラードで女性たちを熱狂させる色男、ジョーの登場だ。これは2007年のアルバム『Ain't Nothin' Like Me』からカットされたシングル曲。もともと自らが優れたソングライター/プロデューサーとして知られるジョーだが、ここではあえて、頭角をメキメキ現してきていたスターゲイトを起用し、彼らのカラーに染まってみせている。スターゲイトはノルウェー出身のプロデューサー・ティームで、ヨーロッパでは90年代末からR&Bもしくはポップ・アクトのプロデュースやリミックスを手掛けていた。アメリカでのブレイクはご存じニーヨのデビュー・アルバムを手掛けてから。そこに目を付けたのがジョーというわけだ。相性すこぶる良し。
これもまたスターゲイトの十八番となるミッド・テンポのバラード・ナンバー。歌うはヴェルヴェット・テディベア(名付け親はグラディス・ナイトだとか)というニックネームを持つ巨体シンガー、ルーベン・スタッダードだ。彼は全米の視聴者をテレビに釘付けにしたタレント発掘番組「アメリカン・アイドル」のセカンド・シーズンの優勝者。幅広い層の意見が反映されるテレビ番組ゆえ、勝ち残るのは当然のごとく確かな実力の持ち主ばかり。ルーベンもスムーズな声を巧みに操って心に響く歌を届けてくれる優れたシンガーだ。2006年リリースのサード・アルバム『The Return』に収録。
ポーラ・ディアンダは現役高校生シンガーとして2006年にデビューを飾ったテキサス州出身の女の子。メキシコ系の両親を持つ彼女は、いわゆるラティーノに分類されるシンガーで、同じくラティーノの人気アーティストであるベイビー・バッシュをフィーチャーした“Doing Too Much”でブレイクを飾った後にスターゲイト&ニーヨによる小気味良いアップ“Walk Away”をヒットさせた。これはそれに続くシングル。前曲からの流れのせいもあって、ハープをあしらったこのミディアムはまたもやスターゲイトの仕事……と思いきや、シェイ・テイラーの手によるもの。キュートなイメージの強いポーラだが、ここではダイナミックなヴォーカルをしっかり聴かせてくれている。
2007年に放映された「アメリカン・アイドル」の第6シーズンに出場し、17歳という若さで優勝を果たした若手女性シンガー。今回のコンピ盤にチョイスされた中ではもっともポップ・サイドのアーティストと言っていいだろう。ただし、この“Tattoo”はスターゲイトのプロデュース作品で、なおかつビヨンセ&シャキーラの二大ディーヴァ共演作“Beautiful Liar”をスターゲイトらと書いたソングライターが参加するという、R&Bファンには見逃せない曲だ。曲調としては、エグさが際立つ“Beautiful Liar”タイプではなく、同じビヨンセの曲なら(やはりスターゲイト制作の)“Irreplacable”タイプ。軽やかなリズムが心地よく響くミディアム・ナンバーに仕上がっている。
とろけるようなエレクトリック・ピアノのイントロに続いて、70年代のスティーヴィー・ワンダーのような世界が展開されるこの曲を歌うのは、90年代半ばにソロ・デビューを飾った中堅シンガーのドネル・ジョーンズ。一般にはTLCのレフト・アイをフィーチャーした“U Know What's Up”が代表曲とされるが、このドリーミーな世界も捨てがたい魅力を放つ。ちょっとマニアックをさせてもらうと、プロデューサー/ソングライターとして参加しているジェイミー・ホーキンズは、あの“Oh Happy Day”を生み出したコンテンポラリー・ゴスペルの名家として知られるホーキンズ・ファミリーの若手。生演奏の楽器を多用する彼のサウンドと、枯れた歌声が魅力のドネルとの相性は抜群というほかない。
90年代半ばに3人の女の子シンガーが揃ってデビューしている。ひとりは後にシンガーとしてはもとより映画女優としても成功を収める中、不慮の事故でこの世を去ってしまうことになるアリーヤ、もうひとりはお茶の間のアイドルとしてキュートな笑顔を振り巻いてきたブランディー、そして最後のひとりが3人の中でもとりわけ天才シンガーとデビュー当初から期待されたこのモニカだ。これは、モニカのセカンド・アルバム『The Boy Is Mine』からのカットで、イギリスのヴォーカル・グループのエターナルがオリジナルとなるポップR&Bバラード。エターナルのヴァージョンはUKを中心としたヨーロッパ圏でヒットしていたが、モニカはトレードマークのコブシ回しを加えることで確実に自分の歌へと昇華し、全米チャート首位を獲得している。