
ここ最近、散見されていたR&Bへのシンセティック・サウンド導入の決定版と言えるのがこの曲だろう。アッシャーの5枚目となるオリジナル・アルバムからのリード・シングルに選ばれたという事実は、つまり彼が自信を持っている曲であることを示しているわけで、実際、この曲にはいっさい弱点なるものが見えてこない。トランス調のシンセ・フレーズを持ち込みながらもベースとなっているのはアトランタらしいバウンシーなビートであり、稀代のR&Bシンガーであるアッシャーの歌からもR&Bらしさが損なわれることはない。つまり、他ジャンルのサウンドを拝借しようが、アッシャーの音楽は常にR&Bでしかあり得ないのだ。R&Bチャート/ポップ・チャートとも首位を獲得。
90年代後半に麻薬的なシンコペーション・ビートを使った斬新なR&B/ヒップホップで一世を風靡して以来、ティンバランドは常にシーンの最前線で新しいサウンドを開発し続けている。昨年リリースされたソロ名義によるプロデューサー・アルバム『Shock Value』は、ミッシー・エリオットやジャスティン・ティンバーレイクなどのR&B/ヒップホップ勢はもとより、フォール・アウト・ボーイやエルトン・ジョンらにまで及ぶボーダレスなコラボが刺激的な作品集だった。新進の美形シンガーとして本格デビュー間近のケリ・ヒルソンを従えたこの曲もそこに収められていたナンバーで、一部の“ショック”な顔合わせに比べると順当と言える作りではあるけれど、仕上がりはため息が出るほどクールで格好良い。
デビュー当時はまだティーンだった彼女もいまや二児の母。4枚目のアルバム・リリースの後に慌ただしく続いた結婚、出産、離婚という人生の大イヴェントを経験し、2007年に5枚目のアルバム『Blackout』でさらにパワーアップを果たしたブリトニー。これは、その最新アルバムに収録されたナンバーで、ティンバランドの片腕として活躍してきたデンジャが単独でプロデュースに当たっている。ソングライターには同じくティンバランドの息がかかったシンガー・ソングライターのケリ・ヒルソンの名前もあり、期待通り、いや、期待以上のフューチャリスティックなR&Bが展開される。
元B2Kのメンバーで、現在はソロ・シンガーとして、あるいは俳優として活躍するオマリオン。“Ice Box”はセカンド・アルバム『21』からカットされ、R&Bチャートでは最高位5位を記録したナンバーだが、ここに収録されているのはDJ・ナブスによるリミックス・ヴァージョン。ティンバランドらによるオリジナル版のつんのめったような重苦しいグルーヴも不思議な魅力があったが、こちらは原曲の雰囲気を活かしながらもアトランタ・ベース仕立てで明るく爽快なビートに差し替え、威勢の良いダ・ブラットのラップを加えている。ちなみにこの曲にはアッシャーをフィーチャーしたヴァージョンなど、ほかにも多数のリミックスがある。
瞬く間に必携アイテムと化したデジタル音楽プレイヤーのiPod。そのCMソングに使われ、アーバン・ミュージック系に限らず幅広いリスナー層の耳を奪ったのがこの曲だった。N.E.R.Dはネプチューンズのファレル・ウィリアムズ、チャド・ヒューゴのふたりにシェルダン“シェイ”ハーレイを加えたロック・ユニット。無機的なビートを基本に組み立てられることの多いネプチューンズのプロダクションとは異なり、ここでの彼らは昔気質の生演奏にこだわりをみせる。呪術か何かの儀式のような雰囲気さえ漂うタムの連打や、はち切れそうなベースライン、時折覗かせるピアノの美しい調べ、そしてラップとも歌とも、R&Bともロックともつかないヴォーカルが渾然一体となって迫り来るパワフルな音楽だ。
ジャマイカンのアーバン・ミュージック・シーンへの進出が珍しくない時代とはいえ、ここまであっけらかんとポップかつキャッチーな形で成功してしまったアーティストというのも珍しいだろう。ベン・E・キングの有名曲“Stand By Me”をもろにネタ使いした“Beautiful Girls”で大ブレイクした彼は、ジャマイカ生まれで幼い頃に移住したマイアミ育ちの18歳。ヒップホップ世代にありがちなコワモテとは無縁のラヴリーな笑顔がトレードマークだ。“Beautiful Girls”に続くヒットとなったこの“Me Love”は、レッド・ツェッペリンの“D'yer Mak'er”(つまりジャマイカ)をネタ使いしたポップなレゲエ・ナンバー。嫌な気分もすぐに吹っ飛んでしまうような明るさが魅力的。
2003年に放ったフランキー・Jとのコラボ・チューン“Suga Suga”で大々的にブレイクしたチカーノ・ラッパー。その“Suga Suga”以外にも、エイコンとの“Baby, I'm Back”やポーラ・ディアンダとの“Doing Too Much”などヴォーカル(R&B)作品への参加が目立って素晴らしいアーティストだ。この“Cyclone”は、レーベルをアリスタに移して気分も新たに制作された2007年リリースのアルバム『Cyclone』のタイトル曲で、リル・ジョン自ら手掛けるクランク・チューン。しかもゲストのT-PAINがお得意のヴォイス・エフェクトを響かせるという豪華仕様だ。ちなみに彼の活動歴は90年代半ばからと長く、当初はベイビー・ビーシュと名乗っていた。
タイリースことタイリース・ギブソンは、鍛え上げられた美しい肉体を持つモデルであり、『ワイルド・スピードX2』や『サウス・セントラルLA』などに出演する映画俳優であり、もちろんシンガーであり、ラッパーでもあり、ジェニュワインとタンクと組んだスーパー・グループ=TGTのメンバーでもある。これは彼のソロ第二弾となる『2000 Watts』に収録されていた曲のリミックス・ヴァージョン。冒頭にはトゥパックの“California Love”でロジャー・トラウントマン(ザップ)が披露していたトーク・ボックスをCalifornia girlともじってみたり、曲の途中にたびたびヒップホップ・クラシックのブギー・ダウン・プロダクションズ“South Bronx”を挿入するなど、アーバン系リスナーなら思わずニヤリとしてしまいそうな仕掛けが。
ヒューイの“Luv N Ya Life”にフィーチャーされていた女性シンガーのデビュー・シングル。エイジアという名前からも想像付くように、彼女はフィリピン人と白人の両親のもとフロリダに生まれたというアジア系R&Bシンガーだ。実は、学生時代には体操選手を目指していたらしいのだが、ある夏に母親の勧めで参加した若手シンガー養成キャンプで歌の道に目覚め、友人づてに知り合ったジャイヴの有力A&Rに認められてデビューが実現したという。コーナボーイズの繊細で美しいトラックに乗るエイジアの声は故アリーヤを思わせるクリアさが持ち味。現在18歳の彼女は、まもなく初のアルバムをリリースする模様だ。
ココは、90年代に“Right Here”や“Weak”“You're The One”など数々のヒットを放った女性グループのSWVのリード・シンガー。90年代末にグループが解散すると、彼女はソロ・キャリアをスタート。記念すべき最初のシングルとしてリリースしたのがこれだった。当時流行り出していたバロック調のアレンジを巧みに取り入れながらも、奇抜なだけに終わることなくココの魅力的なヴォーカルを聴かせる曲に仕上げたロドニー・ジャーキンズの手腕はさすがというほかない。なお、残念ながらアメリカではグループ時代のようなヒットを記録することが出来なかったものの、日本では名曲との呼び声も高い。だからこその今回の収録。日本企画ならではの選曲と言えるだろう。
学校中の誰もが振り向く魔法のグロスというティーンたちを引き込むのにこれ以上ない優れたコンセプトを持つ“Lip Gloss”をラジオでプレイしてもらうよう、HOT97のDJ・イナフに直談判。そのオンエアがきっかけとなってジャイヴとの契約を手にしてしまったというリル・ママは、アルバム・タイトルにVYP=ヴォイス・オブ・ヤング・ピープルを掲げる若者の代弁者的なラッパー。T-PAINのプロデュース、クリス・ブラウンとT-PAINという当代きっての人気シンガーをダブルでフィーチャーしたこのサード・シングルにより、彼女の人気はさらに堅固なものに。
そもそもティンバランドが『Shock Wave』を作るきっかけとなったのは、ジャスティンの勧めがあったからだという。イン・シンクの課外活動的にスタートさせたソロ第一弾『Justified』、そして第二弾『Futuresex / Lovesounds』と継続的にティンバランドを起用し、共に革新的なR&Bを作ってきたジャスティン。彼らのコラボレーションの最も優れた例のひとつがセカンド・アルバムに収録されているこの曲だ。制作/ソングライトは両者にティンバランド門下のプロデューサーであるデンジャを加えた3人。直線的な硬質ビートをループさせながら、音程をファジーにしたラップ的な歌唱や、時代性を薄める古いジャズのようなヴォイス・エフェクトなどによって、フューチャリスティックでありながらなんとも人間くさい猥雑な雰囲気を醸し出すことに成功している。
ポルトガル系カナダ人という出自からしてこのジャンルには珍しいシンガー。ファド(ポルトガルの民族音楽)のミュージシャンを父親に持ちながら、彼女自身はマライア・キャリーやTLCなどのR&Bやヒップホップを中心に、ロックやブラジル音楽まで幅広く聴いて育ったという。そんなボーダレスな音楽趣味は彼女の作品にダイレクトに反映しており、R&Bからの影響を感じさせながらも狭い枠組みに収まりきらない独自の世界を構築している。インパクト絶大な邦題が付けられたこの曲は、ティンバランドとデンジャが手掛けるフューチャリスティックなポップR&B。彼女と同じく多ジャンルに理解のあるティンバランドとの相性は悪いはずがない。
流行りのトランス調シンセをフィーチャーしたスピード感のある涼しげなこのアップは、デジタル配信のみで先行リリースされ、現在ちょっとした話題となっているクウォートという新人のナンバー。今回、めでたく本邦初CD収録となる。ハイチ生まれでニューヨーク(ロングアイランド)とマイアミで育った彼は、マイアミの有力レーベルであるスリップ・ン・スライドの所属シンガー(リリースはジャイヴから)。トリーナの最新アルバム収録曲“Phone Sexx”で甘い声を聴かせて注目を集め、即ソロ・デビューというホットな才能だ。
キング・オブ・リングトーン──世界で最もリングトーン(日本で言う「着うた」「着メロ」に当たるもの)を売った男として知られるT-PAINは、音程補正テクノロジーのAutoTuneをアヴァンギャルドに使ったアクの強いヴォーカルを武器として、見る見るうちにスターダムを駆け上ったシンガー/ラッパー。彼をフィーチャーすることこそヒットへの近道とばかりに、アーバン・ミュージック・シーンでは多くのアーティストがこぞって彼をゲストに迎えている。歯切れの良いギターのリフが飛び出すこの曲は、十八番のヴォイス・エフェクトをかけた歌ではなく、力強いラップで勝負するナンバーだ。なお、フィーチャリングとしてクレジットされているテディ・ヴァーセティとは、ラッパーとしての彼自身の変名。
ネリーの成功により全国区に紹介されることになったセントルイスのヒップホップ。チンギーもそうした流れに乗って中西部から飛び出したラッパーのひとりだ。デビューは2003年。これまで4枚のアルバムをリリースしているが、これはリュダクリスのDTP(ディスタービング・ザ・ピース)/デフ・ジャムから発表された最新アルバムのリード・シングルとなったナンバー。というわけで基本的にはラップ・チューンではあるのだけれど、ゲスト参加しているエイメリーのヴォーカルがいわば主客逆転状態で支配的なため、R&Bファンにこそ人気の曲となっている。エイメリーの声はキラキラと輝くダイヤモンドダストのように美しく、彼女自身の人気曲と比べても甲乙付けがたい素晴らしい出来だ。
セントルイスから彗星のごとく現れた新進気鋭ラッパーのスマッシュ・ヒット。なんでもヒューイがラッパーを目指すようになったのはチンギーのブレイクを目の当たりにしてからという。そうした世代の新しさにも驚かされるが、この曲はローカルでようやく活動をスタートさせた頃にはすでに作られていたという事実にもびっくりさせられる。彼の地のポテンシャルは大きいのだ。ともあれ、“Pop, Lock & Drop It”は彼をメジャー契約へと導き、いざ全国区でリリースしてみれば、その特徴的なダンスとともに爆発的な人気を獲得。そんなリスナーたちの熱い声に応えるべくすかさず作られたのがバウ・ワウとT-PAINを加えたこのリミックスなのである。
ダンスホール・アクトのアーバン・シーンへの進出が本格化し、いよいよR&Bとの融合が起こり始めていた2003年。ショーン・ポールにとってもまさに上り調子でガンガンに売れてきたところでのフィーチャーと来れば売れて当然なのだが、なぜかアメリカでのチャート・アクションはそこそこ。レゲエ文化に強いUKでヒットとなっている。パワフルなトラックは、よく知られたドクター・ドレー“What's The Difference”を引用したもので、ショーンの野太い声に負けじと腹の底から力を込めるブルーの歌いっぷりの良さが最高。ジャズ・シンガーだったという母親の影響か、ジャズ・ヴォーカル的な表現にも光るものがある。
アッシャーが設立したUSレーベルと契約を結んだ男性ヴォーカル・グループで、アッシャー制作の映画『In The Mix』のサウンドトラックに収録されたこの曲でデビュー。オマリオンやマーカス・ヒューストンなどに爽やかなアップを提供してきたコーナボーイズが制作を手掛けているとあって、この曲もご多分に漏れずあの極上の胸キュン・ワールドが展開される。メンバーは全員二十代前半。ティーンのようなフレッシュさを持ちつつ、それでいてしっかりと経験を積んできたことをうかがわせる確かなヴォーカルを聴かせてくれる。一時は活動が滞っているようにも見えたが、今年に入ってまた活発に。ブレイクを期待したい良質グループだ。